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18.尼寺の場所は浸水危険地帯では? [武蔵国分寺の不思議を探る(テキスト版)]

Ⅳ.尼寺の位置をめぐって

18.尼寺の場所は浸水危険地帯では?
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かねがね不思議に思っていたことがある。尼寺の北側と北西側は土地が低く湧水に覆われた沼地のような場所だったはずだ。北西の湧水群が大出水した際、尼寺伽藍地の一部(特に尼坊の場所)は、浸水を免れられない場所に当たっていたのではないだろうか。この場所に何故、あえて寺院を作ったのだろうか。

黒鐘の崖は典型的な大湧水地の地形
尼寺の北西側、現在の黒鐘公園を北から西にとりまく崖線は北西側に深くえぐれており、こうした谷戸は豊富な湧水によって浸食された典型的な地形だ。その黒鐘の谷戸からは、近年まで2つの湧水が湧いており、その一つは今でも多雨季になるとわずかに湧出し、かつて沼地だった名残のような浅い池に流入している。おそらく古代は、北西に切り込んだ崖の裾野にたくさんの湧出口があり、現在の黒鐘公園一帯は沼地のようなところだったと思われる。

大量湧出した時、尼寺はその流れを避けきれたのだろうか。黒鐘公園の奥まった場所から開口部側を見渡すと、地面は緩やかながらも南東側が低くなっている。尼坊伽藍地北側の草原には西から東にむかって、河床のような窪地の地形が残っている。ここは今でも水が溜まりやすく、排水用のマンホ-ルが設置されている。この窪地は東への流れの名残だろう。また、現在の地形図の等高線を見ると、湧水の流れは尼寺伽藍地内の西側を通って南へも流れていたのではないかと思われる地形だ。高い基壇を持つ金堂はともかくとして、流れに近い尼坊あたりは浸水したのではないだろうか。

尼寺の周囲には、溝が並んで3本切られている。2本は塀の外、1本は塀の内側という三段構えだ。出水対策のためだろうか。研究者たちはこの溝を、寺院中枢部の基礎を作るための土を掘った跡だと考えられているらしい。しかし、中枢部の基礎を作る土を確保するために、寺院の塀の内側まで掘るものだろうか。

いずれにしても敢えてこの場所に寺院を作るには、余程深いわけがあったに違いない。




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