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17.参道口からの眺めをイメ-ジする [武蔵国分寺の不思議を探る(テキスト版)]

Ⅲ.計画変更後(現存遺構)の区割りと配置

17.参道口からの眺めをイメ-ジする
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朱塗りの南大門へまっすぐ延びる道の先に堂々たる金堂の大屋根。右30度前方には天に伸びる七層のタワ-。左手には尼寺の甍が優美に連なる。それらの造形物が90度の広がりをもって、扇状に取り巻く緑の丘の麓に抱かれている。国分寺崖線という天然の好処を生かした造形美をイメ-ジした時、この広大な寺院の設計意図の全容が理解できる

技術と美の結晶
武蔵国分寺の広大すぎる寺院地、バラバラな中軸線、この配置がどのような作法によるものかが謎だった。金堂が全体の中央に居るからと言って、金堂を中心に全体を配置したと決めつけると謎は一向に解けない。

それを塔から見た方角の中で捉えなおすと、謎は一気に氷解する。まず湧水との位置関係から塔の場所が選ばれ、その塔を中心とした方位のうち、特に南北基軸、東西軸、冬至の日没・夏至の日没の方角を基準とし、そこに「東山道」と「崖地」と「湧水」と「浸水地帯」という地形的条件を加味すると、寺域の角の位置や辺の角度、主要建物の位置など、全ての位置関係に説明がつけられるのだ。

古代人が発明したこの緻密な作法は、極めて精度の高い測量技術がなければ成立しない。私たちはこれまで武蔵国分寺を、広いばかりで回廊もなく溝だらけ、中軸線もバラバラで場当たり的に造営された、所詮は辺境の寺と過小評価してはいなかっただろうか。

現在の東八道路の南に発見された「参道口」方面から崖線の連なりを眺めれば、その美しい広がりの前に過小評価はたちまち吹き飛ぶ。

府中の国府から北上した道が現在の農工大構内で北西に向かい、この参道口で分岐して僧寺南大門にまっすぐ続く。残念ながら、参道口からは建物にさえぎられて崖線を見渡すことはできないが、1200年前の参道の道筋からわずか数メートルしか離れていない現在の生活道路の道筋からは崖線の一部が見通せて、古代のダイナミックな景観をイメ-ジできる。また、南大門推定地南側の原っぱ(公有地)は参道の真上にあたり、この場に立って参道からの眺めを体感できる。



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